薄毛対策はほかにもある

薄毛対策はほかにもある

見た目をごまかす改善方法

飲む育毛剤を飲んでも、すぐには毛は生えません。それまでのあいだ、どのような対策が必要でしょうか。薄毛の男性は、どのような外見上の対策を講じているのでしょうか?
簡単な方法から難易度の高い方法まで解説しましょう。
パターン1:薄毛を髪型でカモフラージュする方法
ひたいの生えぎわが怪しくなると、必ずといっていいほど、前髪を下ろします。私はこの状態を「タコ足」と呼んでいます。ひたいに垂れ下がった前髪が、タコの足のように見えるからです。この方法の欠点は、薄毛が進むと覆う範囲が広くなり、徐々に不自然な髪型になっていくところです。また、薄毛が進行していますので、髪質は細くフニャフニャになっているにもかかわらず、被覆する範囲が広がっていますので、外見上は清潔感に欠ける髪型になります。
どんどんエスカレートすると、その究極形である「バーコード」と呼ばれる「1:9分け」になります。ほとんどといっていいほど同じ罠に陥っています。
じょうずな髪型をつくる原則は、「あえて薄毛を隠さない」ことです。薄毛の初期にはあえて短髪にしましょう。たとえばベッカム・カットや坊主頭などにしたほうが、個性的に見え、薄毛を感じさせません。欠点を開き直って、露出することで「他人はそんなに気にしていない」ことがわかります。
パターン2:カラーリングや「フリカケ」を使う方法
日本人は肌の色が比較的白く、黒髪なので、コントラストがつきやすく、薄毛がめだちやすいといわれています。このようなときは、薄めのカラーリングで対応する方法があります。芸能人でもやっている人をよく見かけます。難易度が高いのですが、服の色とコーディネートするといっそうおしゃれに見えます。とてもよい方法ではあるものの、公務員や営業系のサラリーマンなどの堅い職種の方々には採用しにくいと思います。
次に問題なのが、通称「フリカケ」と呼ばれている、黒い粉をふりかけて薄毛部分の地肌を黒くする方法です。遠くからの見た目はいいのですが、近づくと平面的で、まるで絵に描いたような頭髪になり、不自然に見えます。ある程度開き直らないと使用できません。もっとも、円形脱毛症のような、小さな範囲のカモフラージュには適しています。
パターン3:装着品を利用する方法
まずは、増毛法の一種で俗称「チューリップ」という方法です。これは、残っている自分の毛の根元に、数本の人工毛をしぼりつけるものです。1本を5本くらいに増量できますので「オッー!」と思います。短所は、はげた人には向かないことと、髪が伸びると結び目が上がって、ブラッシングができなくなることにあります。
次に一般的な方法として「かつら」があります。この方法の長所は、一気に外見を改善できることにあります。最近では接着剤でかつらを頭皮に固定したり、残っている頭髪とかつらを組みこむものなど、ハイブリッドな商品も販売されています。短所は、夏には暑く汗が多く出ること、品質の管理に時間をとられること、最終的なカミングアウトがむずかしいことです。おしゃれに、まるで背広を着こなすように使われるのなら、よい方法でしょう。

毛染めとパーマの問題

日常の診療の中で、毛染めやパーマ剤によるトラブルの相談があります。とくに、理・美容室で行う毛染めやパーマは薬液が強いことが多いので、トラブルになりやすいといわれています。
毛染めやパーマ剤は、頭皮の上でアルカリ性製剤や酸性製剤の反応を行ったり、反応を促進する意味で熱を加えたりします。よく、頭皮がチリチリ痛むという人がいますが、そのようなときは、すでに頭皮に負担が加わり、毛根も被害を受けているのです。中には、一度染めた色が気に入らず、一週間もたたないうちに二度目の毛染めをしたり、パーマのウェーブが気に入らず、すぐさまストレートパーマをかけてもどしたりする方がいます。このような場合、抜け毛が増え、広範囲に脱毛が起こってしまう場合があります。
多くの人は、頭皮が健康でしょうから問題にはならず、いずれは抜けた髪が生えてきますが、皮膚が弱い人や体質的な薄毛がある人は、一度抜けた髪が生えにくい場合が多いので、気をつけなければいけません。
以上をまとめると、
●四週間以内に2回以上、毛染めやパーマをしない。
●皮膚の弱い方や体質的な薄毛がある方は、毛染めやパーマは要注意。
わかっていても、おしゃれでしかたなく行ってしまうことがありますので、気をつけまし

シャンプーについて

●シャンプーはどのようなものがよいですか?
●洗う頻度はどれくらいがよいですか?
●リンスはしたほうがよいですか?
●シャンプーのときにマッサージは必要ですか?
○シャンプーの効果で、毛が生えたり、抜けたりはしません。ご自分の好きなもので洗ってください。
○職種やスポーツをやるやらないなどで頭髪の汚れ方がちがいます。一日一回は洗っても問題ないと思います。
○リンスは、毛先につけてください。頭皮に残留しないよう、よく洗い流してください。
○過度のマッサージは退行期毛を早めに抜き去ってしまいます。指の腹で軽く洗うような適度な力かげんでけっこうです。
ところで、シャンプーの歴史はというと、日本では1960年代前後の高度経済成長期に発売になりました。江戸時代は、お湯洗い、米ぬか洗いなどで、月に1回程度洗うのが主流でした。明治時代になると、鯨油から製造した石けんが登場し、1週間に2〜3回洗う人が多かったようです。ですから、毎日シャンプーするようになったのは、まだ五十年くらいの歴史しかありません。数年前には「朝シャン」が流行しました。これは、女性の社会進出の結果、清潔感を追求した表れと思います。しかし、一日二回洗うのは、頭皮にとって負担が大きいと感じます。
いずれにせよ、シャンプーで脱毛が過度に進行したり、薄毛が改善されるような高い効果はないと考えていただいて、まちがいはないようです。

市販の外用育毛剤の効果

日本には育毛剤・養毛剤という文化があります。歴史は古く、1932年に加美乃素本舗から「加美乃素」が発売され、50ccで1円40銭(当時は高価)でした。1970年代になると、第一製薬が「カロヤン」を発売しました。読者のおじいさま・お父さまも使用されていたのではないでしょうか。
現在、育毛剤は新商品が頻繁に発売され、薬局・薬店のめだつ場所で販売されています。
その効果はというと、使用者ですなおに実感している方は少ないように思います。
ではなぜ、一般の育毛剤の効果は出にくいのかを説明します。
毛の伸長のメカニズムは、毛乳頭細胞からなんらかの毛成長剌激たんぱくが分泌され、これが、バルジ周辺にある表皮幹細胞に作用し、表皮細胞が内・外毛根鞘細胞の分裂と分化を促進し、毛幹が押し出されることによります。したがって、まずはなんらかの育毛物質が毛乳頭細胞に取り込まれることが必要になります。
では、皮膚に直接塗布する育毛剤の成分は、毛乳頭に到達するのでしょうか? この点に関して、メーカーからのデータは提出されていません。ですから、確実なことはいえないのですが、医学的には、どのような成分も毛乳頭まではとどかないと考えられます。育毛成分が毛乳頭まで到達することができないのなら、効果は出にくいといわざるをえません。
ただし、例外があります。大正製薬の育毛剤「リアップ」は、有効成分のミノキシジルが唯一効果を発揮する外用育毛剤です。ミノキシジルの薬効として、血管拡張作用による皮下組織の血流促進効果、表皮細胞増殖促進効果と毛乳頭細胎内での毛を伸長する作用のあるPGE2合成促進効果による毛髪伸長効果があります。なぜ、ミノキシジルだけが毛乳頭細胞に到達するのでしょうか。それは、ミノキシジル自体に血管拡張作用があるので、これによってミノキシジルそのものが血管により取り込まれやすくなり、隣接する毛乳頭細胞に到達するからだと考えられます。ちなみに、ミノキシジルを含有する外用育毛剤には、欧米で発売されている5%外用薬の「ロゲイン」もあり、こちらのほうが効果が高いようです。
しかし、飲む育毛剤「プロペシア」は内服薬なので、消化器官からからだに取り込まれ、血流を介して容易に毛乳頭細胞に達することができます。ですから、外用育毛剤が直接毛乳頭に作用することは考えにくく、育毛効果が出やすいとはいえないのです。

「血行促進」を効能にする育毛剤

薬局やネットで買える育毛剤のほとんどに、「血行促進効果」がうたわれています。医学的にいえば、頭部には心臓から拍出される全血液量の約20パーセントが送られているといいますから、頭皮にはじゆうぶんな血流がいきわたっているはずです。では、AGA(男性型脱毛症)の改善に血行促進は必要なのでしょうか?
これまで説明してきたように、AGAではテストステロンが血流を介して毛乳頭に運ばれ、悪玉男性ホルモンであるジヒドロテストステロン(DHT)に変換されて、男性ホルモンレセプター(AR)にとどき、脱毛たんぱく質が産生され、結果的に薄毛となっていきます。血流がじゆうぶんであればあるほど、テストステロンが運ばれやすいので、薄毛になりやすいといえるのではないでしょうか。
この疑問に対して、実験した医師がいました。図書館で読んだ文献でしたので、著者などの詳細は忘れてしまいましたが、内容は以下のようなものでした。
「AGA患者数十人を対象に、頭皮に向かう優位な血管を手術用の糸でしばって、止めてしまう手術をしました。それでも、頭皮にはランダムパターンという微細な血管が存在するので、頭皮は腐りませんでした。結果は、35%に頭髪の増加が認められました」
すなわち、血行を悪くしたほうが悪玉男性ホルモンが毛乳頭にとどかず、三割強の人は薄毛の改善につながるということです。しかし、これを読まれた方は、このような手術を希望したり、包帯やひもでひたいをしばったりはしないでください。素人判断で試すと、過度な圧迫でひたいの皮膚は簡単に壊死し、傷になってしまいますから。
市販の外用育毛剤には、あたかも必要なように「血行促進効果」がうたわれています。これに真っ向から反対するわけではありませんが、もう一度、AGAの起こるメカニズムを確認し、ほんとうに必要な育毛成分や対処法を検討する必要がありそうです。

外用育毛剤ミノキシジルの話題

「リアップ」や「ロゲイン」(商品名)などの主成分である、ミノキシジル(一般名)は米国の製薬会社であるアップ・アンド・ジョン社で開発されました。そもそも、ミノキシジルは悪性高血圧症の内服薬として、米国を中心に処方されています。残念ながら、日本では認可されていません。
この薬の開発研究者の腕の毛が濃くなったことから、育毛剤としての開発が始まり、一九八七年に、AGA(男性型脱毛症)に陥った頭髪を再成長させる効果があることが発表され、米国のFDA(食品医薬品局)が認可し、当初はミノキシジル2%含有の外用薬「ロゲイン」として販売され始め、現在はミノキシジル5%含有の外用薬となりました。
臨床効果のほどは、多くの医学論文で発表されていますが、AGAでの有効率は25〜35%前後です。日本では、1999年に大正製薬がミノキシジル1%含有の外用薬「リアップ」を一般薬局・薬店向けの医薬品として発売しました。「リアップ」は医家向けではないので、有効率の発表はされていないようです。
さて、比較的効果が期待できる育毛剤で、本態性高血圧症には内服投与されている薬剤なら、なぜAGA治療向けの内服薬で発売しないのかという疑問をおもちでしょう。アップ・アンド・ジョン社は当初、ミノキシジルをAGA治療向けの内服薬として開発を行っていました。しかし、イヌを使用した動物実験で、心臓破裂を生じ死亡した例がありました。薬品開発の常で安全性を最優先した結果、内服薬としての開発は中止になった、と聞いています。
ミノキシジルには、表皮化細胞増殖作用、線維化細胞増殖抑制作用、血管拡張作用(血圧降下作用)などがありますが、心筋細胞のアポトーシス(細胞の自己死)の抑制作用もあり、これがイヌの心臓破裂を生じさせたのだろうと考えられています。欧米を含め、日本でも一部の診療所で試験的にミノキシジルの内服薬を処方するところがあるようですが、安全性の確認をじゆうぶんに行わないまま処方するのは、非常に危険な気がします。

自毛植毛手術はここまで進んだ

植毛手術を世界で初めて論文発表したのは、九州大学医学部皮膚科の奥田庄二先生で、それは一九三九年のことでした。当時は、ハンセン病で抜け落ちたまゆ毛の再建を目的に行われたようです。戦後は、無月経症に対する陰毛再建の目的で植毛が行われていました。
さて、AGAに対する植毛手術を考案したのは米国で、パンチグラフト法という直径4〜5ミリメートルとすこし大きめの頭皮片を移植する方法から発達し、今では、1本から3本の毛を一体として移植する、FUT(Follicular Unit Transplantation)法が主流です。日本では、FUT法とチョイ式植毛器法(特殊な針を使う方法)が発達しています。どちらの方法も、しっかりとした技術ですので、安定した結果が得られます。
プロペシアによる治療効果が見られるまでには通常六ヵ月ほどかかるので、患者さんの中には、髪を早くなんとかしたい、と急ぐ方がいます。また、プロペシアの治療では回復しなかった部位に対して、なんとか毛を増やしたいとの要望もあります。このようなときに、自毛植毛手術は有効で、手術してから六ヵ月もたてば、希望の部位にじゆうぶんな毛を定着させることができます。
植毛手術の方法ですが、後頭部から、平均1×12センチメートルの頭皮を切除し、その部分は縫いあわせます。取った皮膚から毛包を含む毛を1〜3本ずつに分けます。この分けられた毛の株を移植部位にていねいに挿入していきます。一回の手術で、平均2000本の移植が可能です。定着率は平均九五八?セントと高率で生着します。
費用は、一本あたり500円程度です。割高と感じる方もいると思いますが、移植した毛はAGAが進行してもほとんど抜けませんので、長い目で見れば割安かもしれません。

毛髪再生医療の現状と未来

飲む育毛剤はAGA(男性型脱毛症)の方々には福音となっています。しかし、フィナステリドでも改善できない、薄毛になってからかなりの時間がたってしまった晩期のAGAや、他の原因で起こる脱毛症にはいまだ治療法がありません。一本の毛を何万倍にも増やすことができたらいいと思いませんか? 毛髪再生医療とは、このようなマジックが可能なのです。「毛髪再生医療」の研究について、現状と未来予測をお話しします。
臓器はそれぞれが分化した細胞によって成り立っています。もとはといえば、卵子と精子が受精してできた一個の細胞から細胞分裂が始まって、それぞれの器官や臓器が発生します。ですから、最初の受精卵はどのような性質にもなれるような万能の細胞といえるでしょう。もし、この万能の細胞を手に入れることができたら、不老不死も夢ではありません。しかし、受精卵の遺伝子を自分のものに入れ替えるのは容易ではありません。
そこで考えられたのが、自分の体細胞から最終分化する前の幹細胞を取り出して培養し、増やすという組織再生医療です。どの臓器にも幹細胞は存在します。毛の元になる細胞は、毛包の下部にある、毛乳頭部分の「パピラ細胞」と、毛包の皮脂腺付着部のバルジ領域にある「表皮幹細胞」です。この二種類の細胞を取り出して、それぞれ培養し増やして皮膚に移植すれば、毛包が誘導され毛が生えるという理論です。日本では、バイオベンチャー企業の株式会社フェニックスバイオが、欧米では英国のインターサイテックス社、米国のアデランス・リサーチ・インスティチュート社が毛髪再生医療の研究を行っています。
では、研究の現状はどうかというと、培養したパピラ細胞と表皮幹細胞を頭皮に移植すると本物の毛が生えます。
この方法は、前広島大学理学部生物学教授・古里勝利先生が考案した方法で、「毛包細胞移植法」(FUCT)と呼んでいます。
少量の皮膚を採取し、毛包からパピラ細胞と表皮幹細胞を分離・培養し、患者さんの毛のない部分に移植する方法です。しかし、再生した毛はまだ細く短いものです。ですから、現状では患者さんに使えるシロモノにはなっていません。
今後は「いかに、太く長い毛にするか」が研究の主眼となっていくでしょう。
もし、毛髪再生医療が完成すれば、やけどで髪がなくなった人や、生まれつき毛が生えない先天的無毛症、重症のAGA、その他もろもろの人びとにとって夢の治療となることでしょう。

毛包細胞移植法

毛包細胞移植法

 
2012年、東京理科大学総合研究機構などの研究チームは、なくなった髪の毛を再生させるため、いろいろな細胞の元になる幹細胞のうち、毛のまわりにある「上皮性幹細胞」と「毛乳頭細胞」の2種類の幹細胞をマウスのひげの周りから取り出して培養し、背中に移植した結果、ひげや髪の毛が生えてくる皮膚の中の「毛包」と呼ばれる器官ができたということです。