髪の毛とは

髪の毛

髪の毛からわかること

ご存じのように髪の毛は毎日少しずつ伸びている。個人差もあるが通常、一日に約0.35ミリ、月あたりにして約一センチから1.3センチは伸びるという。毛根部分にある毛母細胞が毎日せっせと分裂を繰り返し、髪の毛に変わってゆく。それがどんどん下から押し上げられて髪は伸びてゆく。非常におおまかにいって発毛のメカニズムはこうなっているのである。
もちろん髪の毛の原料は、髪の毛の本体であるヒトの肉体以外にはありえない。なかでも、血液が髪の毛を構成する重要な材料になっている。古代中国人が髪の毛のことを血の生成物と呼んだのは、みごとにその真実を言い当てていたわけだ。
も少しくわしくいうと、毛母細胞に毛細血管を通じて運ばれるさまざまな物質によって髪の毛はできている。これは言い換えれば、髪の毛は過去の体の構成物質の記録庫であるということになる。
たとえば、覚醒剤などの薬物を使用すると、その薬物は血液といっしょに髪の毛のなかに入っていく。髪の毛に入ってしまうとそこから先はもう出口がない。そこに薬物は固定されてしまうのである。もうひとつ、髪の毛は冒頭に記したように毎日キチンキチンと伸びているので、時間的な推移も記録されてしまう。これから薬物の使用期間の推定が可能になる。
まず、薬物使用被疑者の髪の毛をとり、根元から一定間隔に切断し、その各々を分析する。すると、その薬物の発見された位置により、いつからクスリをやっているかが判定されるという仕組みなのだ。容疑者が、イヤほんのツイ出来心で、シャブなんてえのは初めてなんです、とかなんとか言い訳をしたとしても、毛髪検査で、何だおまえずいぶん前からやってんじゃねぇか、ということが一発でわかるという寸法である。このような、毛髪を用いた乱用薬物の検出は、覚醒剤だけでなく、モルヒネ、ヘロイン、コカインなどですでに実用化されている。
薬物だけでなく、過去の栄養状態もまた髪の毛から知ることができる。この方法はいわゆるミネラル、特に微量元素の分析に効力を発揮する。たとえば亜鉛、銅、コバルト、モリブデンといった有用金属のほか、砥素や水銀、鉛、アルミニウムといった有害な金属元素が毛髪からは検出される。亜鉛やら銅やらが体に必要なもんかい、とお思いになるかもしれない
が、たとえば亜鉛が欠乏すると、味覚障害を起こして味がわからなくなるうえに、脱毛を起こす。実際アメリカのドラッグ・ストアではちゃんとビタミン剤と並んで亜鉛製剤が売られている。
実際に微量元素の分析を必要とする病気はそう多くはないが、公害や鉱毒事件の被害を知るのに、被害地域の住民の毛髪中の水銀やカドミウムの検出をおこなうことはよく知られている。ほかに、アメリカの凶悪犯千人の毛髪を調べたら、90パーセント以上の割で異常に高い数値の鉛が検出された、というデータがある。また、校内暴力などの問題を起こす生徒の頭髪も、鉛やアルミなどの数値が高かった、という報告もある。食生活の影響であると解説されているようである。ただ、この手の「社会に有害な因子を化学的に探る」試みというのは、けっこうその妥当性について批判されることが多い、ということを一応付け加えておこう。

そもそもハゲとはナニか? その定義は?

そもそもハゲとは何だろうか? 見りゃわかるとはいいながら、実際に定義しようとしてみると結構むつかしい問いである。
まず手元にある南山堂・医学大辞典の脱毛症の項を見てみると、
『正常に存在していなければならない毛が欠如しているか、脱落して疎または消失している状態をいう。一般に脱毛症として問題になるのは被髪頭部の毛である』
とある。定義としてはこれだけ。まあ医学にかぎらず大辞典というものは、正確さと厳密さが第一であるからしかたがないのだが、とはいえ、明快といおうか、ミもフタもないといおうか疎または消失している状態などと無味乾燥にいわれると、かえってしみじみと哀愁を感じたりする。
しかし、ハゲとそうでない人との線引きというか、何をもってハゲのはじまりとするか、という明確な定義はない。もしここで、
「髪の毛の数が少しでも減ったらハゲ」
というすごく厳格な定義をしてしまったらどうなるだろう。人間の毛髪の数は生まれつき決まっていて、減ることはあっても増えることはない。すると、なんと15歳以上の人間の70パーセント以上が若ハゲということになってしまう。
「正常に存在していなければならない毛」
が抜けてしまうこと、すなわち異常な脱毛の結果をハゲと呼ぶわけだから、いくらなんでもこれはないだろう、と苦情が来そうだ。
それでは、異常な脱毛とはどんな状態のことをいうのだろう。自然に抜ける毛は普通一日に50本程度だといわれている。これを超えてたとえば一日に数百本も抜ける場合などは異常な脱毛といっていいだろう。一般に髪の毛は、成長期毛という段階からはじまり、徐々に太く、長く成長してゆく。そして数年たち、寿命がきた毛の根本は角化が始まり、ついには休止期毛となって頭皮から去ってゆく。そしてしばらくすると同じ毛根から新たな毛が生えてくる。これが髪の毛のライフサイクルである。ところが、この毛髪の入れ替わりがうまくいかず、本来抜けるべきステージにない毛が抜けてしまうのが脱毛症である。
この脱毛の仕方は大きく分けてふたつある。ひとつは、一定面積の毛髪が、成長期であってもごっそり抜け落ちて消失地域ができてきてしまうもの。これは円形脱毛症などの病的な脱毛である(病的な脱毛については別項で詳しく触れる)。もうひとつは、徐徐に消失進行し、気がつくとその面積が広がっている、という男性型脱毛症である。
この場合抜けるのは休止期毛である。普通、若ハゲというのはこのハゲ方のことを指している。それでは、毛の生えていないエリアがどのくらい広がるとハゲなのか? 額と被頭髪部の境目はいったいドコにあるのか。なにやら脳天気な問いのようだが、ハゲの当事者にとっては相当にシリアスな問題であるだろう。アメリカの皮膚科医ハミルトンは、この問いに、
「こめかみ上部の生え際が、頭頂を通って両耳の穴を結ぶ線より前方3センチが臨界点。この線より生え際が後退していると、ハゲ」
という基準を設けた。また、やはりアメリカの医師ノーウッドはこの基準線を、
「頭頂線よりニセンチ。このほうが臨床的には予測しやすい」
と訂正している。ところが、この2人の基準は、白人男性の統計をもとにしているため、ヒタイの真ん中やアクマのてっぺんからハゲはじめることの多い日本人にはうまくあてはまらない。そこで、日本においては、
「眉毛の上端から髪の生え際にわたって、手の指が横に何本分入るかを数える。3本までなら大丈夫だが4本になるとハゲの兆候といえる」
という基準が出されている。こう書くと、必ず試してみたくなるのが人情だ。ほら、そこのあなた、いま、指を当ててみるために本を持つ手を持ち替えましたね?

こんなことでも毛は抜ける①ー全身の健康と脱毛

病気のほか、さまざまな身体上の要因で毛が抜けてしまうことがある。毛だって立派な人体の器官(毛器官、という呼び名があるくらいである)、その運命は生え主(?)の体の状態に左右されるのだ。
まず、毛は栄養失調になると抜ける。毛の材料はたんぱく質。その材料が足りなくなれば成長が阻害されてしまうのは道理である。毛が細くなったり、切れやすくなったりしてついには抜けてしまうのだ。中世の絵巻などに見える餓鬼のアクマのテッペンに毛がないのは、おそらくこの事実を描写しているに違いない。だから極端な低たんぱく食を続けるような無茶なダイエットなどは、まったく髪の毛の大敵なのである。もっとも、極端な飢餓状態になると、こんどは逆に背中などに毛が生えてくるそうだが。
ホルモンのバランスが崩れても毛は抜ける。女性が更年期になって卵巣が老化し、ついには閉経となると、女性ホルモンが減少する。ご婦人方を悩ますこの病を更年期障害と呼ぶ。
イライラ、めまい、腰痛、頭痛、という、薬局の看板にかならず並ぶ症状がでるのだが、ここで毛が抜けることがある。女性ホルモンが減り、ただでさえ髪の毛の健康な成長が鈍るところに加え、全身の状態が悪くなるのが追い打ちをかけるかっこうになるわけだ。更年期だけでなく、お産のあとやピル(経口避妊薬)の服用後にも毛が抜けることがあるが、これは一時的なものであるとされている。また、こちらは完全に病気であるが、下垂体機能低下症というホルモン異常になると、肢毛や陰毛が抜けることがあるとのことだ。
栄養の不足ではなく、特定の栄養のとりすぎで毛が抜けることもある。ビタミンAの過剰摂取である。もちろんビタミンAは毛の発育にも重要な栄養素だが、十万単位以上もの量をとると、今度は過剰症を起こしてしまう。その症状のひとつに脱毛があるわけだ(ちなみに一日の所要量は2千単位程度)。
これについては昔、極地調査隊が現地について1、2ヶ月たつと、髪の毛が抜けてくるという症状が問題になったことがある。調べてみると、当時、調査隊の食料にはオットセイの肉が利用されていた。なかでもその肝臓は栄養が多いので好まれていたという。オットセイの肝臓にはビタミンAが多量に含まれている。これが原因で隊員の髪の毛が抜け落ちたことがわかった。
……しかし、オットセイの肝臓とはずいぶん精力のつきそうな食物ではある。似たような例で、精をつけようとして、やはりビタミンAの豊富な8目鰻などをこれでもかこれでもかと食べまくったあげく、毛の抜けちまったオヤジ、てのもどこかにいそうな感じではある。
ついでにいえば、ビタミンAは脂溶性のビタミンで、過剰にとると水溶性のビタミンB群のように、オシッコに溶けて排出されたりすることがないため、体内に蓄積されることで害を及ぼす。もうひとつ蛇足ついでにビタミンの過剰摂取の害をいえば、ビタミンB6は神経障害を、一般的に摂取されているビタミンCですら腎臓障害や免疫系の障害を起こすことがあるという。なにごとも過ぎたるは及ばざるが如し、ということか。

こんなことでも毛は抜ける②?病気の症状としての脱毛

全身の健康状態によって毛の有り様が左右されるのは、先にあげたとおりだが、もう少し深刻な全身の病でも毛が抜けることがある。
症状として毛の抜ける例を見てみよう。
まず、ホルモンのバランスが崩れる内分泌系の病気。これで脱毛が起こる。たとえば下垂体機能低下症がそうだ。ほかに甲状腺機能低下症や甲状腺機能一几進症でも毛が抜けることがあるという。
それから、膠原病。全身性エリテマトーデスのような病気でも脱毛が起こる。全身性エリテマトーデスを診断上見分ける特微のひとつにこの脱毛がある、というからかなりの確率で毛が抜けるものらしい。膠原病によるハゲは主に前頭部を中心に起こり、額がハゲあがってくるという。また、梅毒やハンセン病といった慢性感染症でも毛が抜けるのはよく知られているところである。戦国時代の武将、黒田如水は、擲毒のため若いころからハゲていたと言われる。
少々意外なところでは、肝硬変の初期症状に脱毛があることが知られている。一般に慢性の肝疾患になると、毛が抜けることがあるという。先に見た下垂体機能低下症と似て、液毛や陰毛が減少する。ところが陰毛は減るだけでなく、縮れがなくなり直毛になるという。頭髪では側頭部からハゲることが多いらしい。肝臓は体内の化学工場とでも言うべき器官で、ブドウ糖やさまざまなたんぱく質などの代謝をおこなっている。またいろいろな有害物質を無害化して排泄する器官でもあるが、肝臓の機能と毛の間の因果関係ははっきりしていない。
さて、世の中には、かかるとほぼ確実に脱毛が起こる病気がある。原因不明、しかも10年から2、30年かけて徐々に進行してついには死にいたる、というかなり恐ろしい病気である。その名も「全身こむら返り病」。英語では“syndrome of progressive muscle spasm,alopecia,and diarrhea”といい、直訳すれば、進行性筋肉直撃・脱毛・下痢症候群となるだろうか。また発見者の名前をとって「里吉病」とも呼ばれている。南山堂・医学大辞典によれば、
『全身の筋肉に有痛性の直撃が生じる原因不明の疾患である。多くの場合十歳前後から発症し、進行性に症状が悪化する。筋直撃のほかに脱毛が特徴で、ほぼ全例に見られる。下痢もおおいが、時にない例もある。これらの3徴のほか、骨、関節の変形、発育障害、内分泌機能の低下などもよく見られる症状である。筋直撃は最初腕、大腿などの一部に見るのみであるが次第に全身に及び、頚筋から咬筋、側頭筋、舌筋にまで生じることがある。いわゆる筋肉がつるという状態と同じような現象が数秒から数分にわたって続き、一日に数回から一日中全身のあちこちに起きている状態までさまざまな程度に出現する』というからたいへんな病気である。死ぬまで腕や股からあご、舌の筋肉にいたるまで、毎日のように体中の筋肉がつる。世に病気の数は多くあれど、イメージ的にいちばんかかりたくない病気のひとつに入るだろう。早く治療法がみつかってほしいものである。なんかもう、ハゲがどうした、というどころの騒ぎではないような気さえするではないか。
……それにしてもこの日本語の病名、なんとかならないものか。ストレートといえばストレートだが、どうにもあまり深刻な感じがしないのだが。

円形脱毛症は病気です

手から出るパワーを患部に当てて病気を治すことを売りものにしている超能力者に、ある人が、
「私のハゲを治してくれませんか」と頼んだところ、
「ハゲは病気ではないので治りません」
とあっさり切り返されてしまったという。ここでいうハゲとは、いわゆる若ハゲ、壮年性脱毛症、すなわち男性型脱毛症のことである。どうやら、年をとるにつれて次第に髪の毛が減ってゆくことは、病気とは認められていないようである。事実、若ハゲの治療には医療保険は効かない。
「若ハゲなどの男性型脱毛症は、病気ではなく生理現象」
ということになっているのだ。だからといってハゲている人の慰めにはとてもなりゃしないとは思うが。
ところが円形脱毛症になると、これは立派な病気である。この項では、病気としての円形脱毛症をとりあげてみることにする。
円形脱毛症とは、別名十円ハゲともいわれることでもわかるとおり、あるとき毛が突然大量に抜け落ちて、十円硬貨大の丸いJm失地域〃ができることからその名がある。ハゲはひとつだけのこともあるが、複数個できて、しかもいくつかつながったりもする。症状がひどいと十円硬貨どころか、手のひら大にもなるという。しかもさらにひどい場合には、頭全体の毛が抜け落ちることもある。もはやこうなると円形脱毛症とは呼ばず、全頭脱毛症という名で呼ばれるようになる。いずれにせよ、成長期にある毛がゴッソリ抜けてしまうのが円形脱毛症の特徴であって、その点で男性型脱毛症と大きく異なる。抜けた毛の毛根部を比べると、その形に違いがはっきりと見て取れる。男性型脱毛症の髪の毛の毛根はやせ細っているが、円形脱毛症の髪の毛のほうは毛根がしっかりしていて、本来ならまだ伸びることができる毛なのである。
円形脱毛症の原因には、ストレスなどによる自律神経障害説、内分泌障害説、毛周期障害説(病巣部の毛が一斉に休止期毛になる)、感染アレルギー説、末梢神経異常説、自己免疫説(自分の免疫が毛根を攻撃してしまう)などの説がとなえられているが、今のところどれが本当かは不明である。ただ、一般的に神経質な、肩のこりやすい、頭が重い、手足の冷えやすい、下痢しやすく時に胃炎や胃潰瘍のある人がなりやすいといわれている。
円形脱毛症は、ただハゲるだけ、という場合が普通だが、時には爪や眼にも症状がでることがある。爪も眼も、毛髪と同じく発生学的には皮膚から分化してできたものなので、そのあたりに何か関連がありそうである。
円形脱毛症の場合、爪には不規則なくぼみや溝、変形が現われ、ひどい場合は脱落が起こることがある。また眼の場合だと白内障を合併することがあるといわれている。眼の合併症は全頭脱毛症や悪性脱毛症(眉毛や腱毛まで抜けてしまう)の場合にともなって起こることが多い、とのことだ。
ことさらに悪性の病気の症状ばかり並べると心当たりのある方は心配になるかもしれないが、しかし、良性の円形脱毛症ならば自然に治る場合が多いから、あまり深刻に心配する必要はない。ただ、繰り返すが円形脱毛症は(ハゲと違い)れっきとした病気なのであるから、アヤシゲな民間療法や養毛剤に頼らず、信頼のおける皮膚科医を訪ねることをおすすめする。

ハゲ=AGA(男性型脱毛症)は遺伝する

ハゲは遺伝する。これは間違いない。もしもあなたが男性で、しかも父方か母方のどちらかがハゲの家系だとすると、ハゲる体質に生まれついている確率は3分の2であるといわれる。父親がハゲていなくても、息子がハゲる場合があるのは、母親のほうにハゲの因子があるからである。もちろん、両親ともにハゲの因子を持っている場合には、もはや諦めていた
だくほかない。男性としての機能が正常に働くかぎり、必ずハゲる運命にある。
ハゲはほとんど男性にかぎって起こる。そこで、1916年、オズボーンは、「男性型脱毛は男を通して優性に、女を通して劣性に遺伝する」という説を発表した。20世紀はじめのころからおこなわれた、家系調査を通じての研究結果である。
しかし、その後の研究で、ハゲの遺伝というのはそれほど単純ではないことがわかってきた。つまり男系の因子だけでなく、女性の持っている遺伝因子も大きく関係することがわかってきたのだ。あなたのまわりにもきっといるはずだ。母方の親戚にハゲのおじさんか何かがいて、当人もハゲちゃった人が。ただ、女性は一般にハゲないので、事態がわかりにくくなっているだけらしいのである。どうやら、ハゲ=男性型脱毛症の原因を遺伝因子にだけもとめるのは間違いで、遺伝で受けついだ、「ハゲる可能性のある体質」
が花開く(?)ためには、何かほかの因子が必要である、ということらしいのだ。
そのハゲを発現させる因子のひとつに男性ホルモンのひとつ、テストステロンの作用がある。テストステロンといえば精力剤として有名であるが、残念ながらテストステロンが多い体質、というのが遺伝するわけではないらしい。実際、男性型脱毛症の男性とそうではない男性の間ではテストステロンの量に差はないことが知られている。
それでは、いったい何が遺伝しているのか。これについて、1942年、アメリカの皮膚科医ハミルトンがある実験をおこなった。
ハミルトンはテストステロンとハゲの関係を見るために、正常な人と、宦官症あるいは類宦官症と呼ばれる、生まれつきテストステロンをうまく作れない人とで、発毛パターンの比較をおこなった。その結果、以下のようなことがわかった。
○男性型脱毛症の家系に生まれた人でも、宦官症の人はハゲない。
○男性型脱毛症の家系に生まれた宦官症の人にテストステロンを投与した場合、ハゲが始まった。
○一方、男性型脱毛症の家系ではない宦官症の人にテストステロンを投与しても、ハゲは起こらない。
○また、思春期以後に去勢され、そのときすでにハゲていた人は、去勢後にハゲの進行がとまる、しかしテストステロンを投与すると再びハゲが始まる。
つまり、ハゲになる体質と、テストステロンとが重なったときにハゲが生じ、遺伝するのは体質である、という結論に遺したわけだ。そして、ハゲになる体質とは、毛髪のテストステロンに対する、細胞レベルでの感受性であることがわかっている。遺伝的に毛包がテストステロンに敏感すぎる男性がハゲる、ということである。

ハゲ=AGA(男性型脱毛症)の分類法(昔の)

人にはそれぞれ個性があり、顔かたちもさまざまだ。そして、ひとくちにハゲといっても、そのハゲ方には実にさまざまな形がある。人の数だけハゲがある、といっていいかもしれない。昔、某養毛剤メーカーが新聞にそのハゲの形を分類して、広告に出したことがある。ちょっと、その分類を挙げてみよう。
 

ハゲの分類

ハゲの分類

①総退却型
最も一般的な男性型脱毛症。頭の前面、真ん中からず1っと潮の引くように後退していって、両耳の脇の毛だけが残る。ある意味でいさぎよいハゲともいえる。頭の形がいい場合、逆にトレードマークにもなるハゲだ。大阪府知事、横山ノック氏のハゲがこれである。
②滝の白糸型
総退却型の、両耳の脇に残った髪の毛の間を、頭の前面をまたぐカタチで、数十本の髪が横断している。俗にいうスダレハゲ。なまじ数十本のみ残っているので情けなく感じるわけだから、いっそ中のは抜くか剃るかしちまったほうがスッキリしはしないかと思うが、やはり残ったものはたとえ一本でも惜しいと思うのが人情である。
③孤島落日型
ちょっと前、よく来日していたドリー・ファンク・ジュニアというレスラーがいたが、彼の髪型がこれであった。額の真ん中に一房のみ髪が残って、まわりから取り残されたようになる。なにか、ながめていてしみじみと哀愁の感じられるハゲ方。こういう人は決して悪いことはできないのだろうな、と思わせる。
④こぼれ松葉型
どこからハゲる、というのでなく、全体に髪の毛が柔らかく、細く、薄くなりはじめ、最後にはポロポロと髪の毛が頭全体に薄く残るばかり、というハゲ方。普通にハゲてこういうふうになるのはあまりなく、なにか病気などでなる場合が多い。女性がハゲる場合も、こういうふうになる場合が多いようだ。
⑤鍾乳洞型
コメカミのあたりがググーッと後退し、真ん中の髪が、まるで鍾乳洞から垂れ下がった鍾乳石のように見えるのでこの名がある。額の広さが知性の象徴とされていた時代があり、ハゲのなかでは比較的、知性があるように見える(?)ので、ある程度社会的に認知されていたハゲであった。
⑥明鏡止水型
昨今ではアルシンド型といったほうが早いか。要するに、頭のてっぺんからハゲてくるハゲ方である。背の高い人の場合、前から見ると気がつかないが、たまに、電車などで席に座ったその人の頭を上から見下ろして、突然、その人がハゲだしていることに気がつき、ドキッとすることがある。カツラや帽子などで最も隠しやすいハゲなので、見破られないようにするのは比較的容易であるが。

家父長の権限としてのハゲ

最近、家のなかでのオヤジの権限が衰えてきた、というボヤキをよく聞く。これは洋の乗西を問わず、アメリカやヨーロッパでもそうであるらしい。
ただ、狩猟民族としてのヨーロッパ人の世界では、子供、特に息子にとって、自分のボスとしての親父はいつかは彼を倒し、乗り越えていかねばいけない存在である。ある意味で、親子というよりライバルなのだ。だから、西欧では息子がある程度の年齢に達して独り立ちすると、親も今度は息子を対等の人間、友人として扱い、男同士のつきあいが始まる。
それに対し、農耕民族である日本などでは、親父というのはグループ全体の長として、いつも家の奥でドッシリ座っている、イメージとしての存在であり、それは息子がいくつになっても変わることがない。
ライフスタイルが変わって大家族制が崩壊した現在、やはり農耕民族型のオヤジのほうが少々、分が悪いようではある。
ところで、狩猟民族、農耕民族、共に、親が息子より優れているのは、長い年月を生きていることから身につけた知恵という点においてである。これは、家族からさらに大きく、部族という単位になると、その知恵をたくさんたくわえた老人は、長老として、村のなかでも特別扱いをうけるようになる。
「老人にだってあまり頭のよくないのはいるんじゃないの」
などと思ってはいけない。大昔、人間が生存競争の激しい世界のギリギリで生きていた時代には、老境に入るまで生きのびるということは、よっぽどの知恵や技術がなければ無理だったのだ。
こうして、われわれ人間のなかに、老人の特徴である、白いヒゲや、ハゲた頭を尊ぶという習慣が、しだいしだいに民族的な記憶として蓄積されてきた。いまでも、大学など、学問を仕事としている人間のなかにヒゲを生やす者が多いのは、ヒゲやハゲが知恵のシンボルであったことの名残りなのである。まあ、めったに自分で頭を剃ってハゲを演出する先生はいないが。
ヨーロッパで売られている食品や飲料のシンボルマークには、農作業や狩猟用の服を着て、白いヒゲを生やし、ハゲ頭にちょこんと帽子をかぶったような人物の図案が使われていることが多い。これは、そのようなグループのり1ダーに率いられていることに、われわれが何となく安心感を抱くという本能のあらわれなのだろう。イギリス人などは、燕尾服に山高帽をかぶり、でっぶりと太った、頭がハゲて白いロヒゲを生やした人物を、ジョン・プルと称して、自国民の代表的なキャラクターとしている。
ハゲでデブといえば女の子には嫌われるかもしれないが、一般的な統計をとれば、案外、愛されるキャラクターの条件としてとらえられているような気がするのである。

髪の毛の本数

だいぶ以前のことになるが、名作SF映画『2001年宇宙の旅』を、早稲田大学のマンガ研究会がパロディ化した作品が話題になったことがあった。そのなかで、木星に向かう宇宙船、ディスカバリー号を操縦するコンピューター(原作ではHAL9000)はSAL8997という名前になっている。サルだけに、ユニ″トが元のコンピューターより3個少ない、というギャグだった。もっとも、サルが人間様より毛が3本少ない、などという言い回しを、いまどれほどの人が知っているかは疑問である。
コンピューターではない実際のサルは、(当然のことだが)本当は人間より毛の数は多い。しかし、頭部に人間のように体毛より濃い毛が生えているという特徴は、どれほど人間に近い類人猿にもないものである。頭髪は、人間と動物を分類する、大きな要素でもあるのだ。
この髪の毛だが、人間を平均すると十万本、ひとりの頭に生えている。もっとも、髪の毛の色で多少の違いはあって、金髪のように、色素の薄い髪のほうが、色の濃い髪より数が多い(理由はよくわからない)。金髪で大体十4万本、褐色で十万8千本、赤毛や黒髪は平均9万本というところであるらしい。逆にいえば、ハゲの人はそれだけの数の髪の毛を失った、ということだ。
髪の毛の伸びる速さなどは別の項で扱うが、この髪の毛はそのぜんぶが一定のスピードで伸びているわけではなく、頭全体の約一割の髪の毛は伸びるのを停止し、抜け落ちるのを待っている。一本の髪の毛の平均寿命は約6年で、この6年、切らずに髪の毛を伸ばし続けていると、髪の毛の長さは健康的な平均男性で約一メートルとなる。
毛根は6年間働いたあと、3ヵ月ほど休んで次の毛を生やすエネルギーをたくわえる。つまり、普通の人間だと、いまの平均寿命でいけばだいたい一生の間にこのサイクルが12回、繰り返されるわけだが、このときに、そこの細胞が次の髪の毛を作る活動を停止してしまうこともある。この状態がすなわちハゲである。
男性型脱毛症は20代でも5人にひとりの割合で進行していくが、最初はほとんど気づかない。30代になると、20パーセントの割合で、自分の髪が薄くなりはじめたことに気がつき、50代では全男性の60パーセントの人々が自分の髪が薄くなったと自覚する。もっとも、これは白人男性の場合であって、われわれ日本人はいくぶんこれより数字が低いが、だんだん、白人型の数字に近づいていっていることはほかの成人病やなんかと同じである。
なお、女性の髪と男性の髪は、ハゲるかどうかを別にすれば、医学的に見てもほとんど質的な差はない。女性のほうが髪が長いのは、女は髪を伸ばすもの、という文化的な条件にすぎないのである。

脱毛法あれこれ

生やそうとする人あらば、抜こうとする人あり!
脱毛は、ある意味では、多くの男性にとって未知の領域である。
ここでは最新の脱毛法の涙と苦悶に満ちた世界をご紹介しよう。
まずは、毛を除去するには脱毛のほかに除毛という方法がある。いったいどこが違うのだろうか?
答えは至極簡単、脱毛はいわゆる毛根から抜く方法だが、除毛は剃るというやりかたなのだ。
除毛にも、安全カミソリやシェーバーで剃るという方法と、クリーム、ムース、ジェルといった強いアルカリ性薬剤で毛を溶かすといったおおまかには2つの方法がある。
しかし、これは根元が残るので、またすぐ生えてきてしまうし、毛先の細い部分を失ってしまうので、次に生えてくる毛の先が太くなってしまうといったこともあって、あまり効果的ではない。
ほかに、クリームで毛の色を落として目立たなくするという脱色という方法もあるが、これも一時的な効果しかない。
そこで、結局根元から断たなきゃ駄目ということで、脱毛すなわち毛の根元から抜き去るという方法へと行き着く。
ただし、男性でも容易に想像できるとおり、これは痛い。
この脱毛法にも何種類かあって、その痛みを男性諸氏が最も理解できそうなものには、脱毛テープがある。これはそのものズバリ、強力な粘着テープを皮膚に貼って一気に引っぺがして剥ぎ取るという方法だ。
ホラ、読んでいるだけで眉をシカメたくなったでしょ?
似たようなものに、温めたワックスを皮膚に塗って、固まったところを剥がす脱毛ワックス、ゼリーを皮膚に塗ってその上からシートを押しつけて剥ぎ取る脱毛ゼリーというのがある。
それから、最もポピュラーな脱毛法で、毛抜きで一本一本抜くという方法がある。これは経済的だが、痛いうえに途方もない時間を要する。まさに、ひとつ抜いては彼のため……
という悲痛な場面さえも浮かんでしまう。
さて、こうなると文明の利器に望みを託したくなるわけで、いわゆる電動脱毛器の類いに行き着く。
電動脱毛器の仕組みにもおおまかにいって、ニタイプある。金属の円盤が高速回転しながらシンバルのように閉じたり開いたりして、閉じたときに毛をはさみ、回転するときに毛を引き抜くディスクタイプと、コイルが伸びたり縮んだりしながら毛を抜くコイルタイプの2つである。
多少高価なだけのことはあって、短時間で広い範囲の脱毛が可能だ。やはり、つらいことは短時間にすませたいもの。
もちろん、脱毛なワケだから、次に生えてくるまで時間がかかるので、個人差はあるにしても約20日の間、スベスベで美しい脚を保つことができるし、次に生えてくる毛もごく自然な感じで生えてくるのである。
とはいえ、無理に抜くワケだから、痛さからは逃れられない。しかし、近ごろはディスクの回転速度を変えられる機能のついた機種なども登場して、かなり対処できるようになっているようだ。
ともあれ、あなたがこんど彼女と会ったときに彼女の脚がスベスベだったら、つらい脱毛の試練に耐え抜いた労をねぎらって、頬でスリスリするぐらいしてあげてほしい。

変わった髪型と民族

ちょんまげの国に生まれ育って、テレビでは毎日のように時代劇を放送している。そんな環境のなかに暮らしているわれわれ日本人は、特にはそんな感覚を持っていないのだが、実はあの「ちょんまげ」は、世界でもまれなる奇異なヘアスタイルなのだ。
実際、「これは!」と思える世界の奇異なヘアスタイルを挙げよといわれれば、
「弁髪と、ちょんまげと、えーと……」
といった感じになる。そのときになってみて、やっと、「なるほど」と、その特異性がピンとくるだろう。
ちょんまげの形に関しては、時代劇などで見慣れたものなので、いまさらといった感じだが、一応記しておくと、頭髪を頭のテッペンで束ねて、もとを結び、月代と呼ばれる剃りあげた額に向けて曲げたものをいう。
なぜそのような変わった形を日本人がするようになったかといえば、戦国時代がキーワードとなってくる。
つまり、合戦の最中、相手と戦っているときにマゲが斬れてザンバラになってしまうと、 髪が視界に入ってしまい、かなり不利になるということで、額の部分を剃りあげて対応した
というわけだ。その語源は、マゲの形がちょんの字「ゝ」に似ているという実に単純な理由。
昔、実際にこのちょんまげを結って高座に上がっていた落語家がいたが、日本人であるわれわれにも、目の前に実物のちょんまげがあるというのはかなりのインパクトだった。まして、これを初めて見た西洋人がかなりの衝撃を受けたことは容易に想像できる。
事実、ペリーは帰国後著した『日本遠征記』に、ちょんまげを見ての驚きを書いているし、万延元年(一860年)に徳川幕府がアメリカに派遣した使節団を見るため、ワシントンでは、人々が大通りを埋めつくし、なかには、そのマゲという特異なヘアスタイルから使節団員が男なのか女なのかわからなかった者さえもいたという。
もう一方の奇異な髪型「弁髪」だが、これは頭髪を剃りあげて、テッペンだけ丸く伸ばし、それを編んで垂らすという、ちょんまげに勝るとも劣らない不思議な髪型だ。
中国の北方民族で広くおこなわれていた髪型なのだが、これは中国大陸の民族対立の歴史に大きく影響している。
後に清朝を築くことになる満洲族は、北京を制圧した後に、それまで、束髪だった北京のすべての民に、弁髪にすることを服従の証として強制した。
『頭を剃らざれば頭を失う。頭を失わざらんと欲すれば頭を剃るべし』
つまり首を斬られたくなければ、頭を剃れということだ。それでも従わなかった者も多く、数十万人の民が首を斬られ、その首は棹にかざされたという。
それほど民族にとって髪型は大きな意味を持っていたということだ。
なのに、「ザンギリ頭を叩いてみれば文明開化の音がする」などと文明開化という言葉に乗せられて、アッサリと伝統のちょんまげを落としてしまった日本人は、少々、節操がないのではないかとついつい思ってしまう今日このごろである。

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