脱毛の種類

脱毛症の種類

脱毛の種類

毛髪の構造を解剖する

では、毛髪はどのような構造になっているのでしょうか。毛の皮膚の下の構造全体を「毛包」と呼びます。この構造は、頭髪のほか、ひげ、まつ毛やまゆ毛、
液毛、陰毛など、体毛のすべてで同じようになっています。

毛包

毛包

毛包は大まかに、毛乳頭、内・外毛根鞘、パルジ領域と皮脂腺で構成されています。また、血液の流入は豊富で、多くの栄養成分や酸素を配達します。毛の知覚は、自由神経終末という細い神経の束が毛包を取り巻いていますので、風などで髪がなぴくなどの軽度な刺激も感知することができます。
●毛髪の伸長
毛が伸びたり抜けたりするコントロールは、どのようにして行われているのでしょうか。
今のところわかっていることは、血流によってホルモンなどの毛の成長因子(詳細は不明)が毛乳頭細胞に運ばれて作用すると、なんらかの毛の成長促進因子がバルジ周辺の表皮幹細胞に作用し、内・外毛根鞘細胞の細胞分裂を促進します。これによって新しい毛がつくられて、毛穴から押し出されることによって毛髪の伸長が起こります。これとは逆に、抑制因子が毛乳頭細胞に運ばれれば、結果的に毛髪の伸長抑制が起こり、脱毛が生じます。

病的脱毛

脱毛には、病気によって起こるものと、体質によって起こるものがあります。前者を病的脱毛、後者を体質的脱毛と呼ぶことにしましょう。
●円形脱毛症
病的脱毛の中でいちばん多いのが「円形脱毛症」です。軽症の場合は、十円玉大の脱毛が起こり、六ヵ月から一年くらいで自然に治ります。中等症では、十円玉大の脱毛部位が拡大したり、多発化したりすることがあります。重症では、頭髪が全体的に抜け落ちたり、さらにまつ毛、まゆ毛、ほかの体毛まで抜け落ちたりすることもあります。
軽症の場合は自然治癒しますが、中等症や重症の方は皮膚科を受診することをおすすめします。「円形脱毛症」の原因は解明されていませんので、特効薬がありません。しかし、リウマチや膠原病などの自己免疫疾患で起こる免疫反応と似ていると考えられているので、「副腎皮質ステロイド」が有効な場合が多く見受けられます。したがって、その治療は専門医にまかせるのが最良の方法です。
●トリコチロマニア(自己抜毛症)
まゆ毛、まつ毛、頭髪を自分で抜いてしまうことによって起こる脱毛症です。精神的なストレスが原因と考えられています。とくに学童期や思春期に、家庭環境の問題や学業のストレスなどによって起こりやすいとされています。成人発症では、神経症や精神障害が背景にあることが多いようです。2〜3回程度の抜毛なら回復もしますが、くりかえして抜くようになると、
瘢痕(はんこん)性脱毛となり、二度と毛が生えなくなってしまうので、注意が必要です。治療は、頭髪の専門医と精神科医とが協力してあたるのが望ましいでしょう。
●分娩後(出産後)脱毛症
多くの経産婦が経験されていると思いますが、分娩後約三ヵ月ごろに気づく脱毛があります。原因は、妊娠・出産によって起こったエストロゲンという女性ホルモンの分泌量の変化によるものと考えられています。多くは、出産後半年以降になると自然に毛量が増加し治ります。しかし、体質的に薄毛因子をもっている女性の場合は、この産後脱毛から回復しにくく、脱毛状態がつづくことが多いといわれています。
●甲状腺機能低下症による脱毛症
甲状腺ホルモンは、頭髪の成長を促進することが知られています。このホルモンが少なくなるような状態である甲状腺機能低下症(橋本病)にかかった場合は、毛周期のうちの成長期の短縮が起こり、脱毛状態になります。このほかにも、甲状腺肥大症時や甲状腺がんなどの甲状腺摘出手術後の甲状腺ホルモン低下状態などでも、脱毛が起こります。対策は適切な甲状腺ホルモン剤の投与です。
●感染症による脱毛症
真菌、ブドウ球菌、ヘルペスウイルスなどの感染により、脱毛が生じることがあります。
初期症状は、頭部湿疹に似た「赤み、かゆみ」などですが、それが長引くようでしたら、皮膚科を受診したほうがよいでしょう。重症化する前に有効な抗生物質を内服すれば、完全脱毛を予防できます。また、ほとんど克服されている病気ですが、ハンセン病でも脱毛が起こる場合があります。
●そのほかの病的脱毛症
膠原病、関節リウマチなどでも脱毛が起こります。心当たりのある方は頭髪専門医に相談されてはいかがでしょうか。
●抗がん剤などの薬剤による脱毛症
抗がん剤によって脱毛が起こることはよく知られています。毛根の下のほうにある内毛根鞘細胞では、毛のもとになるケラチン細胞とメラニン細胞が活発に細胞分裂しています。抗がん剤には、がん細胞の活発な細胞分裂を弱める作用がありますが、副作用として内毛根鞘細胞の分裂を抑制し、毛周期の成長期を阻害して脱毛を起こします。また、ビタミンAや、脳梗塞や心筋梗塞の予防薬である抗凝固剤などでも脱毛が起こります。多くの場合は、薬の服用を中止すれば、脱毛は止まり改善します。

体質的脱毛

体質的脱毛とは病的脱毛以外の脱毛症のことで、男性型脱毛症(Androgenetic Alopecia:AGA)や女性に起こるぴまん性脱毛症などをさします。これらの脱毛には、病気であることを示す「症」がつきますが、病的な状態ではなく、体質を示します。では、なぜ「症」がついたかというと、脱毛の英語名「Alopecia」で、これが「脱毛症」と翻訳されているからです。欧米でも疾患とは考えられておらず、日本でも健康保険適用の対象にはなってい
ません。
●男性型脱毛症
詳細は後ほど解説しますが、思春期以降に起こる体質的な脱毛です。男性ホルモンの一種であるジヒドロテストステロン(DHT)が原因で起こります。
このDHTの産生を抑える薬が「フィナステリド(商品名プロペシア)」です。
●びまん性脱毛症
女性の体質的脱毛の原因は特定されていません。私は、びまん(全体に、という意味の医学用語)性脱毛症は少なくとも三種類に分類されると考えています。一つ目は、女性に生じる男性型脱毛症、すなわち、女性男性型脱毛症(Female Androgenetic Alopecia :FAGA)と呼ばれます。二つ目は、女性ホルモンのエストロゲンの分泌量の変動や分泌低下によって起こる脱毛、たとえば、分娩後脱毛や更年期脱毛です。最後は老化によって生じる脱毛で、六十五歳以上の方に起こるものです。
・女性男性型脱毛症(FAGA)
男性ホルモンのテストステロンは、男性ではおもに睾丸から分泌されます。女性では、副腎より分泌され、男性の20分の1〜10分の1の量のテストステロンが血液中に存在します。では、女性におけるテストステロンの役割はなにかといえば、性欲を起こしたり、筋肉・骨格・大脳の発達や維持に必要であると考えられています。そして、テストステロンの代謝物質であるジヒドロテストステロン(DHT)も存在しているので、男性型脱毛症と同じ発症のメカニズムで薄毛が起こると考えられています。
したがって、この脱毛症の場合、フィナステリドは有効である可能性があります。しかし、フィナステリドの重大な副作用のひとつとして、男児を妊娠中の女性が服用すると、胎児の外性器奇形を生じる可能性がありますので、非常に危険です。イタリアでは、経口避妊薬と併用してフィナステリドの内服治療をしている医師もいますが、研究的な治療行為です。今後、研究が進み、治療に対する有効な根拠であるというエビデンスが揃えば、効果的な治療方法として脚光を浴びる可能性はあります。
・エストロゲンの分泌量の変動や分泌低下によって起こる脱毛
女性らしさをつかさどるホルモンとしてエストロゲンがあり、女性の生理、第二次性徴を促進する働きをもっています。思春期にはその値が変動したり、妊娠・分娩中や更年期には分泌量が低値になります。脱毛時期がエストロゲンの低値と関連があるといわれるので、女性の脱毛症の原因のひとつと思われています。しかし、エストロゲンを体外から加えたところで、髪が生えたりはしないので、女性の脱毛症の真の原因ではなさそうであるとの見方が主流です。「ロゲイン女性用」などの「ミノキシジル外用剤」が治療薬ですが、効果はそれほど大きくはないのが現状です。
・老化によって生じる脱毛
ご主人が定年になったのと時を同じくして、女性に脱毛が生じることがあります。六十五歳以上で進行し始める脱毛です。原因は突き止められていませんが、ほかのびまん性脱毛症と分けて考えると理解しやすいので、老化によって生じる脱毛と呼んでいます。特徴は、毛髪数にはそれほど減少はないのですが、毛の一本一本が細くなっている状態が観察できます。治療には、「ロゲイン女性用」が有効です。「ロゲイン女性用(ミノキシジル2%)」は特効薬と考えてもいいほどよく効きます。