髪と頭皮のしくみ

発毛・育毛の条件

髪と頭皮のしくみ

髪の役割

人が生きている限り、絶え間なくつくり続けられる髪の毛。
その髪には、次のような3つの人切な役割が備わっている。
⑴排泄の役割
私たちの体内で消化しきれなかった、毒素などを含む老廃物は、血流に乗って、
頭皮下に集結する。この老廃物は、髪に取り込まれ、体の外に運び出される仕組みになっている。毒物による犯罪捜査で、髪の中に含まれた成分によって使用された毒物が特定されるのはこのためである。
老廃物の量が多くなると、髪をつくり出す毛母細胞の働きが悪くなってしまうが、それでも、髪がっくり続けられることに変わりはない。
当たり前のことだが、人が生きている限り、老廃物は生まれる。したがって、髪も、人が生きている限り、生える仕組みになっている。
だから、よほど特殊な病でなければ、髪がなくなってしまうことはない。
⑵保温の役割
人の髪の毛は、約10万本といわれている。
この膨大な量の髪の毛は、ちょうど毛糸のセーターやマフラーと同じ原理で、互いの間に空気をとどめ、外気温の変化が直接脳に届かないように、保温材の役割を果たしている。
私たちの脳は、急激な温度変化に対して、きわめてもろく、過敏である。
たとえば、昔は、脳溢血で倒れる人の多くが、夜、暖かい室内から寒いトイレに用足しに行った時に発症したといわれていた。その頃の家屋は機密性に乏しくて、廊下やトイレまで暖房が行き届いていなかったため、急激な外気温の変化に脳が対応しきれなかったための発症であったと聞いている。
このような外気温の急激な変化を緩和させて、脳を護るのも、髪が担っている大切な役割なのである。
⑶クッションの役割
私たちが健康な毎日を過ごすためには、体のすべての機能が正常に働かなければならないが、その中でも、命の中枢をつかさどる脳は、小さな傷ひとつも許されない存在である。そのため、完全に骨で覆われている。
人間の体の中で、完全に骨で覆われている器官は、脳だけである。
脳は、熱や衝撃に非常に弱く、その一部でも損傷すると、人体に重大な影響をもたらしてしまうといわれている。
約10万本備わっている髪の毛の表面は、キューティクルと呼ばれる固い組織で覆われている。ちょうど歯の内部が表面のエナメル質によって護られているのと似ている。キューティクルは、バリアーの役割を果たして、一本一本の髪の毛の内部を外部の刺激から守るとともに、髪の水分を保持する役割も果たしている。
カラーリングの際、髪の色が簡単に変えられないのは、このキューティクルのバリアー機能が働くからである。
このキューティクルによって固められた髪の毛は、非常に丈夫で、これを束ねると、ワイヤーロープにも匹敵するほど強靭なものになる。
ワイヤーロープがなかった頃、寺院の鐘を吊り上げるのに、女性の髪の毛でなわ
れた縄が用いられた事実もある。
一本一本がキューティクルによって固められた髪の毛は、頭蓋骨の上の頭皮にあって互いの間に空気をとどめ、保温の役割とともに、脳を衝撃から護るクッションの役割も果たしている。

酸素と栄養素があれば髪は育つ

多くの人が、髪が育つには特別な条件があるかのように誤解しているが、赤ちゃんが大人に成長するのに必要な条件と同じで、髪は酸素と栄養素があれば育つ。
しかも、人が成長するためには意識的に栄養素を摂らなければならないが、髪は、放っておいても育つようになっている。
なぜなら、酸素は頭皮の呼吸と毛細血管を通してまかなわれ、栄養素もまた、毛細血管を通してまかなわれるからである。
つまり、頭皮の状態と毛細血管に問題がなければ、髪は自然に育つ仕組みになっている。
人が生きて、呼吸をし、食事をしてさえいれば、髪の成長に必要なこの2つの条件は、自然に満たされる。

髪は抜けて当たり前

脱毛を恐れる気持ちから、抜け毛を極端に気にする方がいるが、抜け毛はあって当たり前である。
人の髪は、約10万本といわれる。この膨大な量の髪は、頭部全体を覆って、外気温の変化や、外からの衝撃を緩和して、大切な脳を内包する頭部を護る役割も担う。また、体内の老廃物を排出するために、人が生きている限りつくり続けられ、伸びてゆく。
しかし、髪には寿命がある。髪は際限なく伸び続けるわけではなく、歩行の邪魔にならないように、切らずに放っておいても、その人の腰の辺りまで伸びると自然に抜け落ちることになっている。ショートヘアの場合でも、腰の辺りまで伸びる時間に合わせて抜け落ちる。つまり、抜け毛が発生するのは、自然なことなのである。
この寿命がきた髪が抜け落ちると同時に、新しい髪が生え出る仕組みになっているので、人の髪は常に約10万本を維持できることになっている。
この髪の寿命(生え替わる期間)を毛周期と呼ぶ。
髪の伸びる早さには個人差があるため、髪の寿命(毛周期)は人によって異なる。
これは髪の伸びが早い人と遅い人では、髪が腰の辺りまで伸びる時間に違いが生じるためで、伸びの早い人で約5年、遅い人で約10年といわれている。
仮に、毛周期を5年と定めて、単純に5年間で10万本の髪が生え替わると仮定した場合、1日に約55本の髪が抜け落ちる(生え替わる)計算になるが、毎日決まった量が抜け落ちる訳ではなく、暑い夏と寒い冬は少なく、気温の穏やかな春と秋に髪の生え替わりが集中する。
また、シャンプー時に抜け毛が多く確認されるが心配することはない。自然に抜けた髪は抜けると同時に頭から離れ落ちるのではなく、ほとんどの場合たくさんの髪の間に引っかかって、頭部にとどまっている。
その髪がシャンプー時にまとめて取れるが、20本〜30本程度の抜け毛なら気にすることはない。また、シャンプー行為によって髪が抜けてしまうわけでもない。

髪と肌の成分は同じ

髪と肌は、ともにケラチンというタンパク質を主成分にしてできている。
ケラチンは、約20種類のアミノ酸が結合したタンパク質で、軟らかいものと硬いものがある。
髪の毛ができる最初の過程で、頭皮がへこんで毛穴になるが、この頭皮と毛穴の主成分は、軟ケラチンと呼ばれる、軟らかいケラチンである。
その毛穴の周りの細胞が変化して生まれた毛母細胞がっくり出す髪の毛は、脳を護る目的にそって硬いケラチンに変化してつくられる。
このように私たちの目には全く違って見える髪と肌だが、その主成分は、ともに、ケラチンというタンパク質なのである。

肌のバリアー機能

私たちの身体は、頭のてっぺんからつま先まで、一枚の大きな皮膚ですっぽりと覆われている。
皮膚は、表皮と真皮とに分かれる。
ひどく日焼けをしたときに剥ける薄い表皮は、人によって違いがあるといわれるが、平均すると約28枚の層で構成されている。
基底細胞とも呼ばれる表皮の一番下の細胞が、毎日ひとつの細胞をつくり出す。
つくり出された細胞は、徐々に形を変えて、平均14日後に角質に変わる。角質は、ちょうどレンガを積み重ねるように、微妙に位置をずらした形で、14枚の層をなす。
14枚の角質は層をなして、私たちの身体に異物が入り込まないように、強力なバリアーの役割を担う。私たちが、お風呂に入っても、水ぶくれにならないでいられるのは、これら人体のバリアーのおかげである。
だから、肌や頭皮に化粧品や育毛削などを塗布すると、このバリアー機能の働きで、必要な成分(肌に良い成分)だけが必要な量だけ吸収される仕組みになっている。
しかし、バリアーには限界がある。頭皮に限っていうと、肌に良くない成分が多量に含まれた化粧品や育毛剤などを使い続けると、それらの成分が皮下に徐々に浸透してしまうのは避けられない。
バリアー機能を戦国時代の兵士に喩えていうと、倒しても倒しても、新たに攻め来る圧倒的多数の敵方を前に力つきて、城内への侵攻を許してしまうようなものである。
入り込んでしまった粗悪な成分は、頭皮下に残留する。
その結果、本来は白く透明感のある頭皮がいつの間にか茶色に変色して、独特な臭いを放つようになると同時に、髪の毛をつくる細胞である毛母細胞の働きが弱く
なり、脱毛などのトラブルが発生する。
近年、バリアー機能を破って、育毛剤を強制的に頭皮下に入れ込む「育毛剤浸透器具」を使用して脱毛がひどくなった相談者が増えているが、人体の保護機能を無視して、様々な成分を強制的に入れ込めば、脱毛が促進されるだけではなく、皮下組織のトラブルのもとになるので絶対にやめていただきたい。

頭皮は刺激に弱い

図のように、表皮は、平均14の形の違う細胞と、14枚の角質で構成されている。

表皮・角質層

表皮・角質層

 
基底細胞が毎日ひとつの細胞を生み出す一方で、一番外側の角質が、毎日一枚剥がれる。これが垢である。
この垢となった角質を、無理なく洗い落とすと、その下の肌は、生まれたての状態で現れる。この生まれたばかりの肌は、刺激に弱い。刺激性のある化粧品を使用すると肌が荒れやすいのはこのためである。
ただ、私たちの肌には、保護システムが備わっていて、刺激の強い化粧品を使い続けると、その刺激に対抗して肌が次第に厚く固くなる。
頭皮の場合も同様で、刺激性のある育毛剤を使用すると、湿疹をともなう肌荒れを引き起こす場合がある。また、刺激に対抗して頭皮がだんだん厚く固くなるので、新毛が生えにくくなってしまう。そして、ようやく生え出た新毛も早々に抜け落ちてしまう。刺激性のある育毛剤などを使い続けると、脱毛が進行する場合が多いのは、この、肌の仕組みに基づく結果といえる。