成功者への道はここにある! ビジネスに役立つ落語の魅力【後編】

落語に学ぶ仕事の極意「会社でスマートな人間関係を築こう編」

さて、今回も落語の一席を。前編では落語がいかにビジネスを成功させるためのスキルアップに有効か、というテーマで落語全般について語らせてもらいました。しかし、落語というのは不思議なもので、同じ噺でも、演じ手が変わるとまったく違う噺に聴こえてしまうものです。聴きつづけていくうちに、落語家一人ひとりの人間性や生き様に興味が湧いてきます。落語家個人をフィーチャーした書籍はたくさん出ているのですが、読み進んでいくと共通した話題があると気づきました。それは、コミュニケーションの重要性です。そこで、落語の世界から良い人間関係の築き方を探っていきましょう。

上司・同僚・部下。ビジネスでの人間関係を、落語の師弟関係に当てはめてみよう!

前編でも簡単にご紹介しましたが、お話を伺った横山さんは落語とビジネス、2つの世界を知っている方。現在は講演会やセミナーなどを多数手がけ、より良い人間関係の築き方や、人生を成功へ導く考え方を伝授しています。 今回は、インタビュー形式でその一部をご紹介します。

■イヤな上司にこそ、落語のユーモアをぶつけよう!

編集部:
横山さんはこれまで2万人を超えるビジネスパーソンと出会ってきたそうですが、どんなことを聞かれるんでしょうか。

横山さん:
一番多いのは「理不尽な上司との付き合い方」ですね(笑)。

編集部:
なるほど! 確かに、上司から無茶ぶりがつづくとストレスが溜まりますからね。そういうときのベストな対処法があれば、ぜひ教えてください。

横山さん:
まずね、自分が正しいと主張して上司に勝っても、いいことなんてないんですよ。あいつはめんどくさい奴だと嫌われるだけです。

編集部:
おっと、身に覚えがあります(笑)。ということは、理不尽な上司には自分の意見を主張しないことが正解ですか?

横山さん:
自分の意見を伝えるなら言い方が大切ですね。相手を言い負かしても、それは結局勝ったことになりません。相手の立場を考えて発言すべきですね。

編集部:
なんだか、落語の言い回しが使えそうですね。

横山さん:
そうです、いわゆる粋な表現です。落語を聴くことでユーモアある返しができるようになりますよ。あと落語の噺には、偉そうにしている人がひどい目に合う噺もたくさんあるので、ストレス発散にもってこいです(笑)。

■落語の師弟関係から学ぶ、理不尽な上司との向き合い方

横山さん:
あと、上司に無理して媚を売る必要はありませんが、その上司の下にいて自分の夢や目標が実現できるかで、付き合い方を考えるべきですね。

編集部:
自分の夢や目標・・・ですか?

横山さん:
たとえば、落語家の場合。師匠も弟子にとんでもなく理不尽な要求をするんですね。

編集部:
聞いたことがあります。談志師匠の話だと思いますが。

横山さん:
談志師匠は破天荒な方だったので、そういう逸話がたくさん残っていますね。でも、談志師匠に限らず、どの師匠もそうですよ(笑)。師匠が青と言ったら、赤い信号だって青くなるのが落語の師弟関係です。

編集部:
いや〜、よくお弟子さんは我慢できますねえ。

横山さん:
そうなんです、そこがポイントです。なんで弟子が我慢するかと言うと、師匠に嫌われたら、落語家になるという最大の目標が叶えられなくなるからです。ビジネスだって同じです。その上司の下でなければ実現できないことがあるなら、多少の理不尽も飲み込む方が自分のためになります。

編集部:
ちなみに、落語家さんは師匠を変えられないんですか。

横山さん:
変えられませんねえ。まあ、その師匠の落語に惚れ込んで入門するわけだから、当たり前といえば当たり前なんですけどね。一門に入ったら、そこで頑張るか、諦めるかの二択しかありません。ビジネスなら転職もできますから、その上司の下にいるのがどうしても辛く、他でも夢を実現できるなら、環境を変えてしまうのもひとつの手です。

編集部:
上司ではなく自分自身の問題、というわけですね。

横山さん:
そう捉えておいた方が絶対いいですよ。理不尽な上司のこともあまり気にならなくなりますし。

■あなたの指導は大丈夫? 師匠に習う部下の育て方

横山さん:
上司の立場からの質問では「褒めて育てると叱って育てる、どちらが良いか」ということで悩んでいる方が多いようですね。

編集部:
個人的には褒めて育てて欲しいところですが、どちらが部下にとって良いんでしょう?

横山さん:
どっちでもいい!

編集部:
ええー!

横山さん:
大事なのはそこじゃないんですよ。褒めるにせよ、叱るにせよ、本気で部下のことを考えているかどうかです。それさえ揺るがなければ、どんな言い方でも部下はついてきます。

編集部:
言われてみたらそうかも知れませんね。表面だけ褒められても、あまり嬉しくないです。

横山さん:
落語の世界も同じなんですよ。根底に愛があるから、厳しい師匠にも弟子はついていくわけです。あとですね、「弟子は師匠の背中を見て育つ」という言葉は本当です。口先だけで良いことを言っても行動が伴ってなければ、弟子に真剣に捉えてもらえませんからね。部下についてきて欲しいと思っているのなら、背中、つまり普段の自分自身を正すべきですね。

■出世するときは要注意! 鶴瓶師匠をマネて、嫉妬をはね飛ばそう

編集部:
落語家さんの人間関係というと、やはり上下関係が厳しいイメージがあるんですよね。

横山さん:
たった1日早く入門しただけで先輩ですからね。とは言え門下生はみんなライバルでもあるんです。私の弟弟子に、笑福亭鶴瓶さんがいらっしゃるんですけどね、鶴瓶さんはとても面白くて、先輩より先にどんどん出世していきました。こういうとき、怖いものはなんだと思いますか? 嫉妬ですよ。

編集部:
確かに、ビジネスの世界も同期や後輩が出世していくと、足を引っ張ってしまう人が出てしまいこともありますよね。

横山さん:
ところが、鶴瓶さんは嫉妬されなかった。

編集部:
ほお! どうしてでしょうか。

横山さん:
鶴瓶さんは人柄がいいんですよ。絶対、天狗になるような人じゃありません。逆に「また師匠にめちゃくちゃ叱られた! 破門される!」とオーバーなくらい自分を下げてアピールしていました。これ、なんだか落語的だと思いませんか。

編集部:
前編で紹介した「マクラは自分の失敗談を」という話につながりますね!

横山さん:
そうなんです。上手な失敗談は「あいつ頑張ってるな」と応援したくなる気持ちにさせます。鶴瓶さんは落語だけでなく、人間関係の築き方も天才ですね。落語の世界に限らず、自分の調子が良いと感じる時こそ、周囲に気を使っていくといいですね。

■一流とはなにか。師匠の背中が教える、想いやりの大切さ

横山さん:
でも、私は鶴瓶さんが嫉妬されなかったのは師匠の力も大きかったと思いますね。

編集部:
なにか門下生に対して特別な根回しをされていたんですか?

横山さん:
いいえ、むしろその逆です。師匠は兄弟弟子の前で鶴瓶さんを、むちゃくちゃに叱りつけていたんです。

編集部:
優秀な人をあえて叱るとは、なんだか不思議な話ですね。

横山さん:
師匠はきっとね、「俺がこんなに毎日叱り飛ばしているのに鶴瓶は負けないで頑張っている。あいつは偉い奴だ。応援してやろう」と周りが思うよう、あえて厳しく接していたんですよ。

編集部:
なるほど! あえての厳しさだったんですね。

横山さん:
そして、門下生以外の人には「あいつは頑張って励んでます。どうぞ力になってください」と陰で頭を下げて回る、というね。

編集部:
うわぁ、なんていい話! 感動しちゃいました!

横山さん:
先ほども話しましたが、これが師匠の背中というやつです。本気で育てあげようと思ったら、どんなに厳しくても部下はついてきます。一流とはそういう人のことを指すんですよ。肝心なのはやり方じゃなく、想いです。

個人的な相談も含めたくさんお話を伺いましたが、今回はこの辺で。横山さんの落語家時代の話や、キャリアアップにつながるコミュニケーションについては、書籍にもなっています。ご興味のある方はぜひ、ご一読ください。

人生にユーモアを! 笑いこそ成功の第一歩!

長い文章、ここまで読んでいただきありがとうございました。もう、これで最後ですからね。というわけでラストを飾る真打にふさわいテーマで締めるとしましょう。落語の一番の良さといったら、なんといっても面白い!ということです。落語がもたらす「笑い」の良さを改めて知っておきましょう。

■笑いでスッキリ! 心をリフレッシュさせる落語の力
なにかとストレスの多い現代。また、ビジネスの現場ではプレッシャーを感じることもあるはずです。これらを放置するということは、重たい気持ちや張りつめた気持ちをずっと引きずるということです。この状態では良いパフォーマンスは発揮できません。ストレスケアに笑いが良いのは有名な話ですよね。
中でも落語はリフレッシュに最適です。集中して落語を聴くということは、悩みや考えごとなど、頭の中に入っているものを一旦抜くということです。思考をリセットすることで、新しいアイデアが見つかることもあるはずです。

■落語を聴くとキレイになる!? 笑いがもたらす体の変化
人間の体は笑うと血行が良くなります。結果、新陳代謝が上がるので、老廃物の排出や免疫システムの向上にも役立つそうです。そして、腹筋を使って思いっきり笑うのは、意外とカロリーを消費する動きです。つまり、ダイエット効果も期待できちゃいます! 落語って、頭にも体にも良いんですね。

■人生を笑い飛ばせ!
立川談志師匠の有名な言葉の引用ですが、師匠曰く、落語というのは「人間の業の肯定」だそうです。人間の持つあらゆる欲や、本能。これらは普段、表にでるものではありません。けれど人間は弱い生き物です。頑張りたくない、褒められたい、むしゃくしゃを何かにぶつけたい、なんて誰もが心の奥底で思ってしまっています。そんな弱さを受け入れながら、笑い飛ばすのが落語だそうです。落語の笑いから元気づけられたり、勇気をもらう人が多いのは、こういう理由があるからです。

ということで、我々も人生にユーモアを取り入れて、前向きに日々を歩いて行こうじゃありませんか。成功とは、その先にあるものですよ! どうも、お後がよろしいようで。

横山信治
株式会社オフィス・フォー・ユー代表取締役

小学生の頃、落語家の笑福亭松鶴に入門し、最年少プロ落語家としてテレビ、ラジオ、劇場に多数出演。芸名は笑福亭手遊(おもちゃ)、笑福亭鶴瓶氏の元兄弟子。
1982年日本信販(株)(現三菱東京UFJニコス)入社。全国最下位のダメ営業マンから、一気に全国NO.1営業マンへ成長を遂げる。その後、SBIモーゲージ(株)設立や東証1部上場企業の役員、社長を経て2014年独立。幅広い環境・立場から積んできたキャリアと、これまで2万人以上のビジネスパーソンと接してきた経験を活かし、講演や執筆活動、コラム配信にてビジネスパーソンの育成に力を注ぐ。