未来食堂に学ぶ、思いをカタチにする方法

理想のお店づくりに邁進する話題の定食屋、成功の秘密を聞いてみた

新しい環境に身を置く人も多いであろう、春。期待に胸を膨らませて、新しい環境に来たものの、理想と現実のギャップに悩んでいる、なんて方もいらっしゃるのではないでしょうか。毎日がこう変わればいいのに、自分が本当はこうだったらいいのに。ああだったら、こうだったらと浮かぶ思いは様々ですが、理想を実現するための努力や挑戦を本当の意味で実践するのはなかなか難しいことですよね。 今回UPGRADE編集部が取り上げるのは、各種メディアなどで話題となっている定食屋、未来食堂です。店長の小林さんはもともと日本IBMとクックパッドにエンジニアとして勤めていたという異色の経歴の持ち主。異業種ならではの斬新な視点で、飲食業界のタブーとも言える数々の掟や定石にとらわれることなく、ひたすら自分が思い描く理想のお店づくりへと邁進する小林さんから、思いや理想をカタチにするためのヒントを聞いてきました。

一人ひとりの“ふつう”に応える食堂

はじめに未来食堂について簡単に説明をしておくと、元ITエンジニアである店長の小林せかいさんが、会社を辞めたあとにいくつかの飲食店で修行を重ね、その後に創業した今までにない形態の定食屋さんです。
何が今までにない形態なのか、というとメニューが非常に独特で、ランチは日替わりで1種類だけ。一般的な飲食店のように食べたいものをメニューから選ぶことはできないし、この前食べたアレがおいしかったから!と思っても日替わりなので後日の注文はできない。趣向を凝らしたメニューは常にアップデートされているそうなので同じメニューが再び登場することはほとんどないという、まさに一期一会のシステム。 それだけでも十分変わっているように思えますが、未来食堂の一番の目玉はプラス400円支払うことで、お店にある食材を使って「あつらえ」と呼ばれる自分が食べたいものをオーダーできるシステムです。食材さえ冷蔵庫にあれば「きんぴらごぼう」のように料理名からオーダーすることもできますし、「牛肉をつかった、ごはんがすすむ食べ物」のようにアバウトなオーダーにも小林さんなりの解釈と回答を持って応えてくれます。未来食堂のコアメッセージは「あなたの“ふつう”をあつらえます」というものなのですが、それを体現したのがまさにこの「あつらえ」というわけなのです。

他にも未来食堂の魅力的なサービスやシステムをあげれば枚挙に暇がありませんが、このような独特なシステムを持つ未来食堂は言わば、小林さんの理想のお店を実現したものに他なりません。どのようにしてこのようなユニークな定食屋さんを実現させたのか、小林さんにお話を聞いていくと以下のような3つのポイントが見えてきました。

【1】理想の絵を描く
未来食堂であれば:誰もが受け入れられるお店をつくりたい

【2】実現するための方針を練る
未来食堂であれば:昼の間に利益を回収すれば実現できる。そのために、お店が中心となりオペレーションの主導権を握る

【3】練った策を実行するアイデア
未来食堂であれば:回転率を上げるための効率化策

このように、実現したい絵を描き、それをひもとくように方針を考え、アイデアを実行する。この考え方は私たちのふだんの生活にも活かしていけるものではないでしょうか。仕事ひとつとっても「こうだったらいいのにな」と思うようなことを突き詰め、実現されている状態の絵を頭の中に描き、その絵を実現するためにはどういう策を練ればいいかを考える。そして最後にその策を具体的なアイデアとして落とし、実行していく。実際、未来食堂ではこんなフレームワークで物事に当たっているそうです。

それでは未来食堂で行っているプロセスを例に出しながら、これらの3つのポイントに沿って詳しくお話を聞いていきます。

【1】理想実現の第一歩は“思いを描く”こと

未来食堂がそもそもどうして「あつらえ」と呼ばれるオーダーメイドシステムを採用しているのか。それは、店長の小林せかいさんの『偏食の人であっても受け入れられるお店にしたい』という思いからスタートしています。小林さんご自身がかつてはかなりの偏食家だったそうで、「どんな食の好みを持っている人であれ受け入れられるお店でありたい」と考えてはじめたサービスとのこと。

他にも、50分お手伝いすれば一食無料の“まかない”という変わった制度があるのですが、これもお金を持ってない人を飲食店として「どう受け入れるか」という考えから生まれたものなのだとか。ふつうの飲食店であれば、ビジネス的には考えなくていいようなことでも、小林さんの理想のお店には必要だったのです。 一食無料のまかないの権利を使用せず、『まかないチケット』として他の人への贈り物とすることもできる。

これら2つのユニークなシステムに共通しているのはどちらも、「誰もが受け入れられ、誰もがふさわしい場所を実現したい」という小林さんの思いからはじまっているのです。このように、理想の思いをカタチにするためのまずはじめのステップは、実現したい絵(未来食堂の場合、誰をも受け入れるお店)を頭の中に描いて、それをひもとくように、どうすれば実現できるのかを考えているそうです。

【2】描いた思いを実行するための方針を決める

たとえば、「誰もが受け入れられ、誰もがふさわしい場所」を実現しながら、その中で利益も出し、お店を存続させていこうとしたらどうしたらいいのか。それを考えた時、昼間のお客さんで利益をあらかた回収することができればこのお店は存続できるなと小林さんは考えました。だから、ランチタイムだけで12席あるお店の席を3回転位まわす必要がある。では次に、そのためにどうしたらいいか。手法は色々ありますが、未来食堂ではお店の方針を『お店が中心となりオペレーションの主導権を握る』ことにしたのだそうです。

では、お店が中心となりオペレーションの主導権を握るとはどういうことでしょうか。例えば未来食堂ではメニューには掲載していませんが、食後に一口デザートがつきます。これは、料金をいただいて提供する定食のセットではなく、お店からの“お気持ち”。だから、お店が忙しい時にはデザートはつけていません。つまり余裕があればサービスするけど、忙しい時はお客さんの入れかえを重視させてもらうという考え方です。こういったお店側が用意したフレーム・条件とお客さんの要望が合致した時だけにサービスを提供するという考え方は小林さんの前職であるIT業界のシステムに対する考え方として一般的なものだそうです。もちろん飲食業界の常識で言うとありえないことです。それでも、小林さんが考える理想のお店実現のためには必要な考え方なのです。

こうして文字にしてしまうと、なんだかお客さんのことを考えてないみたいに思われるかもしれませんが、決してそうではありません。そもそも未来食堂の価格帯(ランチ平均850円)は周辺と比べても約100円安く、この価格帯で定食屋でデザートが付くというのは“常識的”に考えるとありえません。デザートはあくまでプラスアルファであり、デザートをつけないほど忙しい時というのはつまり、待っているお客さんがいる時。デザートをつけて待っている人をより待たせてしまうよりも、デザートを配膳する手間や食べる時間をなくして、待ち時間を少しでも短くしたほうが、待っているお客さんの幸福度は高いはずです。デザートを期待している人からすると、少し物足りなく感じるかもしれませんが、それよりも「未来食堂に行けばいつでも待たずに食事ができる!」と思ってもらうほうがお客さんの満足度も長い目で見れば高いはず、という考え方です。それにデザートをつけない日にはちょっとしたお菓子をプレゼントするなど、お客さんへの心配りは忘れません。
こうした取り組みを行うことで、未来食堂のファンを増やし、忙しい時でもあっても進んで協力してくれる、言わば味方のようなお客さんを増やしているわけなのです。こうした味方になってくれるお客さんの協力もあって、驚異的な昼間の回転率を実現しています。

これは、前述したまかないを行う「まかないさん」を除き、すべてを一人で行っている小林さんだからこその巻き込み力といったところです。上司や協力会社を巻き込まなければならないシーンの多い、我々ビジネスマンもぜひ学びたいところ。

さらに、味方をつくるための工夫は他にもあります。未来食堂では事業計画書から月次決算、「まかない」のマニュアルまでほぼすべてと言ってもいい情報をオープンソース化しているのです! これはつまり、手の内をすべて明かしているということに他なりません。当たり前のことですが、手の内のわからない人よりも、すべてをさらけ出してくれる人のことを人間は信用します。未来食堂が公開している情報を見て、それに共感しファンになる。そんな人も多いんだそうです。

【3】決まった方針を実行するためのアイデア

オーダーメイドのお店を実現・継続するために、ランチの回転率をあげるという策が決まったら、次は回転率をあげるために具体的にどんなアイデアを実行するのかを考えます。未来食堂では回転率をあげるために、様々な工夫をこらしています。
たとえば、お客さんが来店されてからお帰りになるまでのプロセスだけを比べても工程にこれだけの差があります。 このように文字で追っていくだけでも、通常のお店のほうが相当大変そうなことがわかりますよね。

特筆すべき点として、未来食堂ではごはんをお客さん自らがよそって自由に食べるシステムを採用しています。これは炊飯器からごはんをよそう工程を1つ無くすという効率化の側面と、ごはんを好きなだけよそえる楽しみの両面があります。ただ単にお客さんに負担を強いるのではなく、「おひつからごはんよそうのっておもしろいかも!」と思ってもらえるような価値転換が大事なんだとか。

また、先ほどの流れにも登場したように、メニューが1種類であることも、オーダーを取る必要がないため、スピーディーなランチ提供に大きく貢献しています。ちなみにIT業界の用語では、主体となる側が要求を一つしか受け付けないことを『口をあまり開けない』というのだとか。これも、元エンジニアならではの発想ですよね。
逆に『口を開ける』状態になってしまうと、通常のオーダーの他にオプション注文を受け付け調理をしなければならなくなるので、言わばマルチタスクの状態になってしまい、能率が落ちる可能性が出てきます。これ、一般的なお仕事でも同じことで、上司や得意先からの要望にふりまわされるのではなく、いかに『口を閉じる』の状態を自分でつくりだせるかが、仕事の効率化につながってきそうです。

さて、未来食堂に話を戻すと、1種類しかメニューを用意しなければ誰が来ても同じ注文なわけですから、着席してもオーダーを取る必要はありません。着席したお客さんが自分でごはんをよそい、その隙に小鉢から定食を提供しはじめる。そうすることで、待ち時間ほぼゼロを実現しているんだとか。
また、メニューが1種類なので使うお皿もカタチが違うものを用意する必要がありません。すべて同じセットのお皿で済ませることができるので、数を用意できるし、引いては洗い物もラクになるのです。
ふつうの飲食店では席数の2倍くらいの数の食器しか用意していませんが未来食堂ではその倍近くの食器を用意することで、洗い物の効率化をはかっています。

常識ではなく、自分の“したい”を実現するための術を考える

ここまでに挙げたように、理想のお店の絵を描くことと、方針を決めること。そして、それらを実現するための大小様々なアイデアが、理想のお店の運営を支えているというわけです。これらのアイデアは、ほかほかのご飯を提供しなければならないといった考えや、いつでも同じメニューを提供しなければならない、といった飲食業界の当たり前を疑うところから発想されています。“常識”と思われているムダを省く。この柔軟な考え方が、未来食堂の個性となり、理想の実現に貢献しているのです。

    

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  • 2017.04.05

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